ポータルサイト


雑草の駆除方法(除草剤を使用する方法)

雑草の駆除の方法としては、大きく分けて3つの方法があります。1つ目は、物理的に取り除く方法、2つ目は、なんらかの薬剤を用いる方法、3つ目は、生育環境の制限による方法

これらの方法は、駆除の目的、駆除の環境等々により適切に選択する事が必要になってきます。

ここでは
・除草剤の種類(主に、茎葉吸収移行型のもの)と作用
・除草剤の成分と性能
・除草剤ごとのコスト
・除草剤以外の物質を使用した除草
・農薬の基礎知識
・除草剤の枯草メカニズムの種類
・除草剤の安全性
等々についての記述があります。  

2.薬剤を用いて除草する方法

この方法は、最も楽に除草が出来る方法です。しかし、周囲の環境に悪影響を及ぼしたりする恐れもありますので、事前の検討が重要になってきます。

a)除草剤を用いる方法。

除草剤には多種多様な種類があり、対象となる雑草を選択的に駆除するもの、植物全般にわたり効力を発揮するものがあり、それぞれに特徴があります。家庭の周辺の雑草駆除を考えると、最も適しているのは、局所的に効果が限定され土壌への影響が少なく、比較的安全性が高いアミノ酸系のものだと思われますので、それについて説明します。

(一般の雑草の駆除用)
商品としてはラウンドアップと呼ばれている、グリシナート(イソプロピルアンモニウム N-(ホスホノメチル)グリシナート)が成分の除草剤です。(1970年、米モンサント社が開発)
その特徴としては、その薬剤を植物の葉や茎に散布すると、それが植物の全体に移行して、植物全体を枯らす様な作用をする、(茎葉)吸収移行型(接触した植物の全体を枯らす)の植物ならばどれでも(非選択型)効果がある除草剤です。


具体的には、植物内のアミノ酸の代謝を阻害し、円滑な生体活動が出来なくなるような作用をします。それでいて、土壌中では容易に分解されるので残留して環境を汚染する心配が少なくなっています。
さらに、根からは吸収されないので、残したい植物の近くまで散布しても、その植物にさえかけなければ、影響は少なく、安心して除草ができるのも、大きな特徴です。

ただし、価格が高いので大量に使用する場合など、同じ成分のジェネリック農薬を使用も考えてみてもいいと思います。(例:ラウンドアップ-->ジェネリック剤:サンフーロン
また、グリシナートに別の除草剤を組み合わせたものや、グリシナートそのものではないが、ほぼ同等の効果のある除草成分のものなど様々な、物が市販されているので適宜使用してその効果を確認できると思います。
「グリシナート」は、別名「グリホサート」と呼ばれています。またよく似た名前の、「グルホシネート」(ヘキスト社開発(現バイエルクロップサイエンス社))と呼ばれるアミノ酸系の除草剤(代表的な商品に「バスタ」があります。グリシナート、グリホサートとは化学構造が異なります)も(茎葉)吸収移行型の除草剤で、良く用いられます。

※ジェネリック医薬品:特許期間が切れた、医薬品を他の会社が製造・供給するもの。一般的に、特許に伴うライセンス料が無いので、安価に出来るのが特徴。ラウンドアップの成分のグリホサートは、すでに特許期間が過ぎている。

特徴のまとめ
◎吸収移行型で、植物の一部に散布すれば、植物全体(根、茎、葉)を枯らす。一年生、多年生両方に効果がある。
◎非選択性除草剤(どの植物にも効果がある)。
◎土壌中では分解され、根からは吸収されない。
◎生長点に作用するので、あらかじめ草刈り等で生長点を除去しないようにする
◎原液は液体で、用途により希釈して、塗布したりスプレーしたりして使用します。  

◆ラウンドアップの種類
 
商品名成分吸収時間
ラウンドアップグリホサートインソプロピルアミン塩 41%6時間
ラウンドアップハイロードグリホサートアンモニウム塩 41%2~3時間
ラウンドアップマックスロード グリホサートカリウム塩 48%1時間

現状では、メーカ(日産化学※)も、改良型のラウンドアップマックスロードに注力しており、ラウンドアップと言えば、ラウンドアップマックスロードになります。(マックスロードについてのメーカーの説明です)
ラウンドアップマックスロードは新技術、トランゾーブⅡテクノロジーの採用より、雑草への、有効成分の吸収量及び地下部(根)への移行量が大幅にアップしました。よって、スギナのようながんこな雑草もより確実に根まで枯らせるようになりました。また、散布後1時間経っていれば、雨に降られても効果が落ちることはありません。従来のラウンドアップは6時間でした。
※2002年に、米モンサント社から、日本国内での製造・販売権を日産化学へ譲渡され、現在に至っています。

◆主な、茎葉吸収型除草剤
  
成分      商品名      備考開発
グリホサートラウンドアップサンフーロン等のジェネリックが多数販売。定番の、吸収移行型除草剤。米モンサント社
グルホシネートバスタハヤブサと言う同様の成分の商品がある。スギナ系には、ラウンドアップより効果が高い。アメリカでは、この除草剤と、グルホシネート耐性の遺伝子組み換えトウモロコシを組み合わせて栽培中。独ヘキスト社(現バイエルクロップサイエンス社)
 

ラウンドアップとその類似成分の除草剤の例

◆除草剤のコスト比較(価格はアマゾンの販売価格を参考)
   
商品名成分標準使用濃度容量(ml)価格(円)1Lのコスト(円/L)☆
ラウンドアップマックスロード グリホサートカリウム塩 48%100倍希釈120011809.8
ラウンドアップマックスロード グリホサートカリウム塩 48%100倍希釈200015807.9
サンフーロン (1本)グリホサートインソプロピルアミン塩 41%100倍希釈5002605.2
サンフーロン (20本)グリホサートインソプロピルアミン塩 41%100倍希釈500x2048004.8
ネコソギAL 1.0グリホサートイソプロピルアミン塩 1.0%原液使用2000770385
バスタ グルホシネート 18.5%200倍希釈500198019.8
バスタ グルホシネート 18.5%200倍希釈1000388019.4
☆標準使用濃度に希釈した場合の1Lあたりの散布液のコスト(円)

本家の、ラウンドアップマックスロードは価格が高いが、吸収性が良く1時間で吸収し効果を発揮。
ジェネリック剤であるサンフーロンは、最新のラウンドアップより吸収性は劣る(6時間必要)が、価格が安い。
除草効果自体は、そんなに変わらないので、散布時にすぐ雨がかからない様に注意出来れば、安いジェネリックでOK、ですし散布時の天気等をあまり気にせず確実に除草したいならば、本家のマックスロードと言う事になりますね。
一方、組成の異なる、バスタは、スギナの様な駆除が難しい雑草に強みがあり、グリホサート系(ラウンドアップ、サンフーロン)以外の選択肢として存在価値があります。

手軽に使用できる、そのまま使える希釈タイプは(使用濃度に希釈済み)、コストはかなり高くなりますが、希釈の手間が省け、散布用の容器も不要で、スポット的に除草したい時などに利用してみる価値があります。

(芝生の雑草の駆除用)
芝生の雑草は、選択型の除草剤でないと、芝生そのものも影響が出るので、専用の物を用います。
用途別に、イネ科用と広葉用の除草剤が市販されています。
イネ科用・・アージラン(アシュラムナトリウム塩成分、バイエル社)等
広葉用・・MCPP(フェノキシ系のホルモン型選択性除草剤)
ザイトロン(トリクロピル:フェノキシ系のホルモン型、吸収移行型の除草剤)
 インプールDF(ハロスルフロンメチル)等
があります。自宅の芝生の雑草が、イネ科なのか広葉なのか、または両方なのかをよく見極めて、それに対応する薬剤を使用します。両方の場合は、薬剤も両方用を用います。


用途商品名成分等(製造・販売)
イネ科アージランアシュラムナトリウム塩バイエルクロップサイエンス社
広葉用MCPPフェノキシ系のホルモン型選択性除草剤クミアイ化学工業等
広葉用ザイトロントリクロピル:フェノキシ系のホルモン型、吸収移行型の除草剤日産化学工業等
広葉用インプールDFハロスルフロンメチル。シバゲンDFの商品名でも販売。日産化学工業等
 

アージラン除草剤の例


mccp除草剤の例            ザイトロン除草剤の例


b)除草剤に準ずるものを用いる方法。

除草剤以外のもので、植物の生育を阻害するものに、裏ワザ的に良くブリーチが使われる事があります。市販のブリーチの成分は、次亜塩素酸ソーダが5~6%、安定剤としてカセイソーダが0.5~1%と言う具合の、きわめてシンプルな配合物です。(台所用として売られているものには界面活性剤が配合されているものもあります)
除草効果は一定の効果はありますが、用途外の使用ですし強アルカリ性で目、ヒフなどに付着したら非常に重大な障害を起こす恐れもあります。また、通常の、分解であれば最終的に無害な水、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム等になりますが、酸性物質(酸性トイレ用洗剤等)との混合により
NaClO + 2HCl → NaCl + H2O + Cl2 といった反応で、猛毒の塩素が発生しますので、そのあたりは十分注意が必要です。
まあ、余ったブリーチがたまたま手元にあり、除草範囲も限られている時の、限定的な方法と考えましょう。
 

その他、塩をまく方法、熱湯をまく方法等も一定の効果はありますが、塩の場合塩害の影響で周辺の環境に悪影響を及ぼす恐れがあります。(除草剤は生分解されますが、塩はいつまでも残ります)。熱湯も、接触した部分は枯れますが、それ以外の部分はまた再生してきます。結構な量の熱湯が必要となりコストパフォーマンスもあまりいいとは言えません。

農薬に関する参考知識(2012年6月現在の状況、今後も法律は変わる可能性があります)

家庭の除草には、非農耕用の物を使用し用途を守るようにしましょう。
農薬は、「登録農薬」と「特定農薬」の2種類があります。
  登録農薬:国の厳しい審査を経て登録されるもの(安全性、使用方法等厳格に規定されています)
  特定農薬:(特定防除資材)は、農作物、人、家畜及び水産動植物に害を及ぼさないもので、農林水産大臣と環境大臣が指定した農薬。
「重曹」、「食酢」、「使用される場所の周辺で採取された(地場で生息する)天敵(寄生バチ、テントウムシ・・・)」の3種のみ。

※除草剤は登録農薬にあたります。
さらに除草剤はその使用目的から、3種類に分けられます
◎農林水産省の登録がある除草剤
・農耕地用農薬
・農耕地・非農耕地(宅地、運動場、駐車場、道路、線路など農耕地ではないところ)両用。
◎農林水産省の登録がある非農耕地専用除草剤
・非農耕地用(農耕地に使用すると「農薬取締法」違反となります)
◎農林水産省の登録がない非農耕地専用除草剤
・非農耕地用(農耕地に使用すると「農薬取締法」違反となります)

登録農薬には、必ず登録番号が表示されています。

参考サイト(独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)

(除草剤の除草メカニズム別の分類)
a) アミノ酸、タンパクの合成阻害(グリホサート、ビアラホス、グルホシネート等:ラウンドアップ、バスタ、ハヤブサ)
b) 活性酸素発生による過酸化(パラコート等)
c) カロチノイド生合成の阻害(オキサジクロメホン等)
d) 光合成の阻害(イソウロン、トリアジン系、ダイアジン系等:シンバー、ハイバーX、シマジン、クサノック)
e) 脂質生合成阻害(エスプロカルブ等)
f) 脂肪酸生合成阻害(シハロホップブチル等)
g) 植物ホルモン作用のかく乱(2,4-D、クロロフェノキシ系、安息香酸系等:MCPP、ザイトロン)
h) 細胞分裂、核分裂の阻害(トリフルラリン、尿素系のタイムロン、メチルダイムロン、カーバメート系のIPC、ジニトロアニリン系等)
i) 4-HPPD阻害(ピラゾレート等)

除草剤の安全性について

一般的に、毒性を評価する基準としてLD50、LC50値が用いられます。

LD50 (経口、経皮)
動物の体重1kg当たりの投与重量mg(mg/kg)で表示する。
LC50 (吸入)
ppm、mg/Lで表示する。
投与・暴露した動物の半数が死亡する用量
      
暴露経路単位区分1区分2区分3区分4区分5
経口mg/kg55030020005000
経皮mg/kg5020010002000
気体ppm10020025005000
蒸気mg/l0.521020
粉塵・ミストmg/l0.050.515
         毒性高<--------------------------->毒性低

上記の評価基準で、ラウンドアップ(グリホサートカリウム塩 48%)はどうかというと
 

◆ラウンドアップ(グリホサート)の安全性の資料はこちらです
◆バスタ(グルホシネート)の安全性の資料はこちらです

となり、急性毒性に関しては問題が無く(いずれも区分外)、水生生物に関して影響があると言う評価になっています。
庭に池等があり魚を飼っている場合は注意が必要です。
また、目への刺激は中程度あり、皮膚への刺激は軽度の刺激と評価されています。

ちなみに、食塩のLd50は3000~4000で、砂糖のLd50は30000です。
除草剤の中ではパラコート(ピリジニウム系:現在は使用禁止)250、2,4-D(有機塩素系)375~666と毒性が強いものがあります。

ただ、基剤を浸透させやすくするために配合されている界面活性剤等が地中に残留して環境に悪影響を及ぼすとか、発がん性等の危険についても、とりざたされる事もあるようですが、信頼できるメーカーのものを適正量使用するのを厳守すれば、基本的には生分解されますので問題は起こらないかと思われます。